骨董市で出会ったフランスの器。
欠けていても、その佇まいに心を奪われた。けれど、日常で使う勇気が出なかった。
「どうしていいかわからない」——そう感じながらも、手放せずに棚の奥へ。
欠けた器は、まるで自分の心の中の“未完の想い”のように、ずっとそこにあった。
そんな時、金継ぎを知ったという一人の生徒さんがいた。
自らの手で欠けた部分を修復し、金で継いだその器を見た瞬間、彼女は微笑んだ。
「長い間、心に残っていたもやが晴れたようです。明日から毎日使いたい。」
器を直すことは、ものを修復するだけではない。
それは、心を整えるという行為でもある。
欠けを受け入れ、そこに金を添える。その瞬間、器も人も新しい美しさを手に入れるのだ。
金継ぎを体験すると、ものを大切にする心が深まる。
そして、日々の食卓が静かに豊かさを取り戻していく。
欠けているからこそ、美しい。
それが、金継ぎが教えてくれる日本の美学である。
器と金継ぎのコラムに関連する記事
壊れても終わらないストーリー 金継ぎで器が輝き出す瞬間
お気に入りは、一度壊れたくらいで終わりません。
割れてしまった器を前に、
「どうしよう…」「作家さんに申し訳ない」と
肩を落とす方がたくさんいます。
でも、壊れた器には、
もう一度美...
壊れた器に宿る物語 金継ぎが教える日本の美と誇り
いや、本当に不思議ですよね。
壊れた器を「もっと美しくする」なんて、そんな文化が他にあるでしょうか。
世界がKintsugiに惹かれる理由は、技術の美しさだけではありません。
「傷を隠さず、むし...
壊れた器を「もっと美しくする」なんて、そんな文化が他にあるでしょうか。
世界がKintsugiに惹かれる理由は、技術の美しさだけではありません。
「傷を隠さず、むし...
高まる金の価値と変わらぬ「継ぐ」心〜maison kintsugi ginzaの思い〜
金の価格がこれほどにも高くなるなんて、誰が想像したでしょうか。
金1グラム2万後半にまでなろうとしています。
銀も、ここ10年で最高値。
金継ぎの現場では、
この数字が“重み”としてのしかかっています...



