同じ器なのに修理が違う理由ー素材が語る金継ぎの美

同じ器なのに修理が違う理由ー素材が語る金継ぎの美

「同じ器なのに、どうして修理方法が違うの?」


実は磁器と土器では、素材がまったく異なり、漆の吸い込み方や仕上がりが大きく変わるのです。そこを理解せずに一律で修復を試みると、滲みが出たり、思わぬ失敗に見えることもあります。


けれど、それは“失敗”ではありません。むしろ素材の個性が表に出た瞬間。金を蒔く線の入れ方ひとつで、その滲みさえも美しさに変わるのです。沢山の器を扱ってきて実感するのは、まったく同じ修理など存在しない、ということ。


お修理依頼してくださった方の、金継ぎされた器を手に取った瞬間の素敵な笑顔が全てを物語っています。
海外からも金継ぎされた器を購入したいと銀座の工房を尋ねてきてくださいます。
それほどに、素材ごとの違いは奥深く、金継ぎの世界を魅了する力を持っています。


だからこそ割れた器をすぐに捨てないでください。金継ぎを検討し、自分の手で挑戦してみてほしいのです。そこには単なる修理以上の体験、日本文化の息づかいがあります。


器を直すことは、あなた自身の心をも整える時間。金継ぎは“再生”ではなく、“新しい物語の始まり”なのです。

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