「完璧なものこそ、美しい」と思い込んでいませんか?
実はその考えこそ、日本文化に深く息づく「侘び寂び」の心からは最も遠いものです。侘び寂びとは、不完全さや時間の経過に価値を見出す美意識のこと。茶の湯を大成した千利休も、欠けやヒビに宿る美を重んじました。そこから金継ぎの文化も育まれたのです。
私が初めて修理依頼を受けた抹茶茶碗はとても柔らかく繊細な器で、手が震えるほど緊張し、一つ一つの工程を確認しながら修復しました。漆の染み込み方さえ味わいになるその作業は、侘び寂びそのもの。依頼者からは「落ち着いた美しさが戻った」と言っていただき、金継ぎがただの修理ではないことを改めて感じました。
今では“Kintsugi”という言葉が世界中に広まり、侘び寂びの思想は多くの外国人を魅了しています。完璧なデザインや新品の価値を重んじる文化の中で、「欠けやヒビをあえて見せる美学」は新鮮に映ります。それは単なる工芸技法ではなく、人生の見方そのものを変える哲学として受け入れられているのです。
まずは器を眺めるときに、侘び寂びの心を意識してみてください。不完全さの中に、深い豊かさが見えてくるはずです。
完璧を追い求めるよりも、不完全を愛する。そこにこそ、日本文化の誇りと、世界へ広がる未来があります。
なぜ“欠けた器”が新品以上の価値を持つのでしょうか。
欠けやひびは「終わり」ではありません。そこから始まる新しい物語があるのです。
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「金継ぎ=金で仕上げるもの」——そう思っていませんか?
けれども実際には、器の個性によっては銀で仕上げる”ほうが美しくなることもあります。
光沢を放つ金が主役に...
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焼き物の呼吸に触れる金継ぎ
壊れた器に耳を澄ませたことはありますか?
多くの人は、ひびが入った瞬間に「もう使えない」と思うでしょう。
でも私たち修復の仕事をしていると、器が静かに語りかけてくる瞬間があるのです。
「まだ終わりじ...
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