壊れた器に耳を澄ませたことはありますか?
多くの人は、ひびが入った瞬間に「もう使えない」と思うでしょう。
でも私たち修復の仕事をしていると、器が静かに語りかけてくる瞬間があるのです。
「まだ終わりじゃないよ」と。
先日、楽焼の名匠・吉村楽入さんの抹茶茶碗を修復したときも、
まるで息をしているような柔らかい土の感触がありました。
壊れた部分をつなぎ合わせるとき、力を入れすぎると砕けてしまう。
だから私は、器と対話しながら、一つひとつの破片をそっと戻していきました。
昔は漆のパテではなく、水サビというサラサラとした漆素材で修理をすることもが多くあったそうです。
余計な部分を傷つけないように優しくうめていく。
それは効率ではなく、器への敬意そのもの。
金を光らせることが目的ではなく、作り手の想いを静かに継ぐための仕事です。
焼き物には、それぞれの呼吸があります。
触れ方を誤れば壊れ、丁寧に向き合えば美しく蘇る。
修復とは、壊れたものを直すことではなく、“作り手の魂”と再びつながることなのです。
どうかあなたにも、器の背景にある作家の想いを感じ取ってほしい。
そうすれば、日々の食卓が少し変わります。
手に取るたびに、日本文化への誇りと、静かな美しさを感じられるようになります。
焼き物の声は、今日もそっと語りかけています。
聞こえていますか?
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